これは仕事というより、楽しみで書いた本だ。
イントロは〈ぼくがその不思議な「道具学会」に入会したのは1997年1月のことである〉ではじまる。
新聞記事を目にしたのがきっかけだったが、なんだか怪しい団体なのである。最初に連想したのはシャーロック・ホームズ探偵譚に出てくるあの「赤毛連盟」だった。
しかし、その総会に出かけてみると、「赤毛連盟」というより、どちらかというと「白髪連盟」だった。爺さんたち(失礼!)がやたら目につくのである。女性や若者が少ない。
ところが、この爺さんたちがじつは考古学、民俗学、文化人類学、生活学、ロボット工学、そしてインダストリアル・デザイン界などの大物たちだったりしたのだ。その道具学会で、ぼくは活動をはじめる。あちこち旅をして、さまざまな道具を遊びをせんとや集めけむ、戯れせんとや調べけん……。
そして、ぼくが最初に本に書いてみようと思ったのが、パリのマルシェ(市場)で出会った「おまる」だった。本書の書名もそこに由来している。
発行後、3日目にして「朝日新聞」の新書欄に紹介され、10日後には「中日新聞(東京新聞)」の「この人この本」欄に著者の写真入りで掲載されたのでちょっと嬉しかったのだが、驚いたのは「赤旗・日曜版」の書評欄にとりあげられたことだった。「おまる」が好きな人たちのことを「マルキスト」というのかもしれない。
村瀬 春樹