住宅誌「月刊HOUSING」(リクルート)の1992年8月号~2000年5月号に連載した作品に書き下ろしを加えてまとめた「住宅探偵シリーズ」4冊。
ハードボイルドでお茶目な住宅探偵=本屋敷竣が、家づくりの渦中に待ち受ける難問愚問、珍問奇問だらけの事件を快刀乱麻に解決していくというスラップ・スティックな物語である。
1987年のある日、当時「月刊HOUSING」のコーディネーターだった堀込一博氏から「住宅をテーマに“美味しんぼ”をやってみないか」というオファーがあった。根っからのお調子者の性格が災いして「ようがす! やりましょう」──これが発端だった。
ところが、こっちは筋金入りの熱狂的マンガ読者ではあっても、マンガ家ではない。原作をまかせるといわれても、どうとりかかってよいのかわからない。仕方ないので映画のシナリオ集を大量に読み漁り、ページをスクリーンに見立てての「マンガ・シナリオ」を書いてみた。
-P1/コマ1~3-
(中ロング)・冬である。
深夜。本屋敷の事務所のある街の一画。
暗い街灯に照らされた暗い路面。
(小アップ)・そこへ、つんのめるように急ブレーキをかけた1台のタクシー
(ヘッドライトが煌々と輝いている。キキィーッ! とか派手なブレーキの音)
(小アップ)・そのタクシーから転がり出すように走り出す1人の人物
(男性。暗いので誰なのかは読者にはわからない。男の足音がカッカッカッ)
卜書き→「それは、ちょっとクレイジーな、ある冬の夜のできごとだった……」
|
……てな感じである。さいわい、雑誌連載中から人気を呼び、単行本化されてからは、講談社サイエンティフィックの編集部に「本屋敷竣さま」という住宅探偵宛の家づくり相談が殺到したりしている。
たまに、直接、自宅に電話があったりして──
「本屋敷サンいる?」と若い女性の声。「大変なの! うちの現場、基礎と土台 がズレてるの!」
「……んなこといわれても」とぼく。「住宅探偵の1巻目はお手元に?」
「あることはあるけど、どーしたらいいの!?」
「じゃ、とりあえず、202ページを開いて……」
とかやったりしているのだが、星は巡り、月日は流れ、おかげさまでこの「住宅探偵シリーズ」は20万部を超えるベストセラー。いまでも、増刷がつづいている。
村瀬 春樹