Book Review 5
新潮社:『本気で家を建てるには』 増補決定文庫版&ハードカバー版

今では住宅ギョーカイ内ですっかり有名になった次のような惹句からはじまる、ハードボイルドな「家づくり本」である。

大工さんはそれを「家」といい

ハウスメーカーはそれを「商品」という

建築家はそれを「作品」と呼ぶが

不動産屋の店頭では「物件」となりはてる

文庫本の底本となったのがハードカバー版。文庫版は66本のショート・エッセイのほかに、書き下ろしの【基礎講座】を加えた増補決定版。

下のような実用情報で構成されており、必要なときに、必要な個所を引けば、「辞書」のように使えるつくりとなっている。

ビギナーのための資料編
【本気で家を建てるための基礎講座】

 1 リラクゼーション講座
   家づくりは「道楽」である

 2 理論武装講座
   世の中にはいったいどんな住宅があるのか?

 〈工法/構造/間取り/動線〉
 〈バリアフリーハウス/シックハウス〉

 3 現場社交講座
   あなたが出会う「業者」たちの素顔 

 4 自己責任講座
   あなたがすることになる「施主の仕事」

 5 裏ワザ講座
   家づくりはハードボイルドに!
   〈資金計画/業者選び/契約方法〉

 巻末の「解説」は、小林秀雄賞受賞直後の斎藤美奈子さんが担当してくれた。

「この本がおもしろいのは」と彼女は書く。「家づくりからみた戦後社会学(思索)であると同時に、家づくりを経験した人でないとわからない実践的な書(施策)にもなっている点だ」

あるいは、実用書みたいな顔をして(施策)、じつは挑発的な思想(思索)の書なのだというべきなのだろうか。タイトルに冠せられた『本気で』の三文字を甘く見てはいけない」

 その三文字を甘く見なかったにちがいない。このエッセイ集が出版されたあと、「うちで売る住宅を“商品”と呼ぶのはやめました」といってきた大手ハウスメーカーがあったのには笑った。

村瀬 春樹

村瀬春樹 著
新潮社
定価 700円(税込み)
文庫サイズ/ 523ページ
2002年11月01日発行

村瀬春樹 著
新潮社
定価1,470円(税込み)
B6判/245ページ
1998年01月25日発行