【 証言 】 シバ/三橋乙揶氏
2006年4月「AERA」増刊号(朝日新聞社)『ぐゎらん堂/音楽の街、吉祥寺から生まれた武蔵野タンポポ団』より
〈そんな秋の、ある夜のこと。(いきつけの吉祥寺「タムタム」という店で)いつものようにテーブルの片隅でウィスキーをちびちび舐めていると、女性の常連客が慌ただしくドアを開けて入って来るなり、「ちんどん屋がこんなの配ってたよ」。そのチラシを見ると、そこには「ぐゎらん堂・武蔵野火薬庫」と書いてあった。
数日後、タムタムではその「ぐゎらん堂」の事が話題を集めた。どうやらその店にはブラインドレモン・ジェファーソンという古いブルーズマンのレコードがあるらしい。ディランのデビューアルバムにその人の曲が入っていて、私はぜひ聞いてみたいと常々思っていたのだ。
ある夕暮れ、私は意を決してあのビルの三階まで細い急な階段を上がり詰めた。「武蔵野火薬庫・ぐゎらん堂」である〉
【 証言 】 亀和田武氏
2005年10月「ランティエ」(角川春樹事務所)『「フォーク」と「ロック」の伝説/伝説の人「高田渡」と村八分「チャー坊」』より
〈「ぐゎらん堂」が現在の東急デパートの先のビルにオープンしたのは、七〇年の秋だった。
学校の通学路に面していたので、初日から通いはじめた。大きな徳用マッチに《武蔵野火薬庫 ぐゎらん堂》と書かれていたような気がする。オープン記念に、客には一個ずつ、この徳用マッチが渡された。
開店から一週間のうち、私は六日間通い、結局十個近い、物騒なラベルがついたデカ箱マッチがアパートの部屋に溜まった。温和な笑みを浮かべながら、徳用マッチを配っていたのが、後に晶文社などで著書を出す、オーナーの村瀬春樹氏だったのだろう〉